イノセントマインド

                         (四カカ)           





 澄んだ夜空には大きな満月が浮かんでいた。

開け放した窓から秋の優しい風が吹き込んでくる。

 
 眩しい月明かりに照らされながら、白いカーテンがゆらりと揺れた。

 
 部屋にいるのはまだ身体も未発達の細身で華奢な少年。

 
 少年の名ははたけカカシと言った。

 
 任務を終えたカカシは着替えもせずにじっとベッドの上で蹲っていた。

 顔を膝の間に埋めて、石のように固まったまま動かない。


 もうどれくらいそうしているだろう。


 そんな中、遠慮がちにインターホンが鳴った。


 はじめてカカシは顔を上げ、玄関先を数秒見つめた後、ゆっくりとベッドを下り玄関のドアノブに手を伸ばす。


 真夜中の訪問者は、先程まで頭の中を占領していた人物だった。


「…ミナト先生」


「やあ。夜分遅くにすまないね」


 カカシの師匠である波風ミナトは、少し申し訳なさそうに笑った。

 





「暗部に志願届けを出したんだって」


「…はい」


 薄暗い部屋の中で、カカシは蚊の泣くような声で小さく返事をした。


「どうしてだい」


 ミナトは相変わらず穏やかな声で聞き返す。


「ミナト班は…終わりですから」


「……」


「先生が四代目火影に任命されたと聞きました。遅くなりましたが、おめで…」


「僕のせいかい」


 カカシが言い終わる前にミナトが割り込んだ。


「…前から考えていたことです」


 少しだけ笑うカカシの顔が痛々しくて、ミナトは黙り込む。


「オビトもリンも死にました。残ったミナト班は俺だけです」


「……」


「先生が火影になれば、ミナト班は完全に消滅します。俺はもう用無しでしょ」


「カカシ…」


 ミナトはカカシに近付くと、骨っぽい肩に手をかけて目を合わせるように屈んだ。


「君はもう上忍だ。これからは部下を従えた君が小隊長になり任務を与えられる事になるだろう。それなのに何故今更暗部へ…」


 カカシは決して目を合わさず、じっと下を向いたまま口を引き結ぶ。


 小さく溜息を吐いたミナトは、カカシの肩から手を下ろして背中を向けた。


「実は以前から何度か君を暗部に欲しいという推薦状が届いていたんだ」


「……」


「全部俺が断っていたんだけどね」


「知ってます…」


 そう、とミナトは少し困ったように笑った。


「暗部は影の特殊部隊だ。極秘任務なだけあって敵は手だればかりだし、死の危険性が一気に増大する。君はまだ若いしこういう場に出るにはまだ…」


「まるで俺が戦死するみたいな言い方ですね」


 カカシは鼻で笑い、ミナトの言葉を遮った。


「君の力を認めてないわけじゃないんだ。ただ、君は何処か死に急ぐような節があるから…」


 ミナトがそっと目線を移すと、カカシは何も言い返せないように口を閉ざした。


「君を暗部へ行かせたくなかったのは俺の我侭だ。俺はもうこれ以上部下を失いたくない」


 遠くを見るようにミナトは続けた。


「カカシ。君はまだオビトへの後悔に苛まれているんだろう?」


「……」


「もう自分を許してもいいんじゃないか? 戦に死は常に付いて回る。今生きている自分を責めなくてもいいんだ。オビト自身もきっとそれを望んでいるはずだよ。だから君に写輪眼を託した」


「……」


「死に場所を探しているような君を、オビトやリンは見たくないはずだ。俺もそうだから…」


 初めてカカシが顔を上げてミナトを見遣った。


 優しく微笑むミナトに、カカシはなるたけ笑顔を作るようにして見つめ返す。


「俺、やっぱり暗部に行きます」


 その言葉に、ミナトは笑みを引っ込め少し悲しげな表情を浮かべた。


「俺は死にません。約束します」


「カカシ…」


 少し瞳孔を開いた後、ミナトはそっとカカシを引き寄せ、抱き締めた。


「先生…」


 ん? とミナトが小さな身体を抱き締めながら聞き返す。


「最後に、俺の頼み聞いてくれますか?」


「なんだい? 君の頼みならなんだって…」


 離れたカカシがミナトと真っ直ぐ目を合わせ、マスクの下でゆっくり言葉を紡いだ。


「俺を、抱いて下さい」


「…っ!」


 ミナトは驚いて一瞬目を戸惑わせた。


「カカシ…」


「俺、ずっと先生のこと…」


 後の言葉を遮るように、ミナトはカカシの肩に手を置いた。


「カカシ。君は勘違いしてるよ。俺は男で君も男だ。君は早くに両親を失くし幼い頃から俺の傍にいたからそれを恋愛感情だと勘違いして…」


「先生が…好きです」


 目の前で、とても小さな告白が綴られた。


 躊躇うように、カカシがそっとミナトの手の上に自らの手を乗せる。


「暗部に行ったら、スパイ要員として夜伽の任務もあると聞かされました。だったらせめて初めては先生がいい…」


「……」


「俺のこと、気持ち悪いですか」


 ミナトは鼻で笑うと、首を横に振った。


「カカシを気持ち悪いと思ったことなんて一度もないよ」


「本当に…?」


「カカシは俺の誇りだよ。可愛い俺の教え子だ」


 その言葉に、カカシは少し切なそうに目を伏せた。


「弟子だからじゃなくて、俺は…」


 口に出した途端、カカシの目にじわりと涙が浮かんだ。


 片目しか解放されていない顔はみるみるうちに歪み、泣き顔を隠すように慌てて目を擦る。


 不意に、ミナトの手がカカシの口布に掛かり、そっと引き下ろされた。


 呆然と固まっているカカシをそのままに、今度は後頭部に手をやり額宛ても取ってしまう。


「君の素顔は久々に見たな。やっぱり綺麗な顔をしている」


 ミナトが感慨深く顔を包んで覗き込むので、カカシはどういう顔をして良いか分からず恥ずかしそうに涙で滲んだ目を彷徨わせる。


「俺もカカシが好きだよ」


「…っ!」


 カカシは今度こそ驚いてミナトの顔を見上げた。


「一度だけ…師匠と弟子を超えてみようか」


 両目を見開くと、ミナトが優しい仕草でカカシの唇に自分のそれを押し当てた。


「せん…せ…」


「最初で最後だ。それでいい…?」


 カカシは少しだけ間を置いた後、ゆっくり頷いた。


 それからミナトの優しい指で、静かに衣服を脱がされて行く。


 忍具の入ったポーチも、手袋や下着も全て取り除かれ床の上に音を立てて散らばった。


 部屋の明かりは一つも灯っていなくとも、満月の月明かりだけが妙に眩しく、全裸にされたカカシは恥ずかしさに頬を染めて目を逸らしていた。


「綺麗だね、カカシ」


 まだ誰にも触れられたことのない、未発達の少年の白い裸体はどこまでも美しかった。


「せ、先生…」


「ん?」


「シャワー浴びてきていいですか…?」


 ミナトが目を細めて口許に軽い微笑を浮かべる。


「俺、任務から帰ってきてから着替えもしてなくて…きっと汗臭いから…」


「いいんだよ、そんなこと」


「で、でも」


 カカシは少しでもミナトに不快な思いをさせるのを恐れ、食い下がった。


「俺はそのままのカカシを抱きたいから」


 かっと顔を赤らめたカカシに、再びミナトが手を伸ばしてきた。


 顎を取られ、優しく唇を重ねられる。


「ん…っ」


 口腔に熱い舌が忍び込んで来て、カカシは強く目を閉じるとミナトの服を握り締めた。


「ん…は……っ」


 息苦しいのに、離れたくない。


 何も身につけいない身体が次第に熱を帯びてくる。


 緊張と期待感が入り混じり、心臓が早鐘を打って興奮を促す。


 いつの間にかカカシもミナトに貪りつくようにして、自らも舌を使っていた。


「あ……」


 クラクラしていた頭のせいで体が傾いていたのも分からず、気付けばベッドの上に押し倒されていた。


「せん…せ…」


「やめるかい?」


 不安そうな顔を汲み取ったのか、そう訊ねてきたミナトに慌てて頭を振る。


「や、止めないで…っ」


 ふ、と笑ったミナトはぎゅっとカカシを抱き締めてきた。


「一度、だけだ…」


 まるで自分に言い聞かすように、ミナトがカカシの耳元で呟いた。


「先…んん…っ」


 ミナトが強く口付けてきた。


 先程の優しく労わるようなキスとは違う、苦しいくらい乱暴なキスだった。


 口腔を探り激しく舌を絡ませ合う。


 どちらのものか分からない唾液を何度も嚥下しながら、長いキスが漸く終わった。


 息を切らしながらゆっくり目を開くと、ミナトが初めて見せる雄の表情に、カカシは驚いた。


「カカシ…」


 ミナトにこんなに熱っぽく名前を呼ばれたのは初めてだった。


 これから始まる未知の行為より、自分を求めてくれている喜びにカカシは打ち震えた。


「先生……」


 ミナトは優しく微笑むと、カカシの首筋に顔を埋めて弄るように全身を撫で回した。


 ぞわりと肌が泡立つ。


 胸の尖りを指で弾き、捏ねるように刺激を与えられた。


 ミナトは唇を下へと移動させると、もう片方の突起に吸い付き舐め始める。


「あ…っ」


 溜まらず声が出た瞬間、カカシは慌てて自分の手で口を覆った。


「カカシ、声聞かせて」


「や、やだ…」


「恥ずかしくなんてないから」


 覆っていた手を優しく退けられる。


「カカシの声も、身体も、全部曝け出して欲しいんだ」


「…っ!」


 突然下肢を撫で上げられた。


 たった一撫でなのに、それはみるみる熱を持って堅く膨張を始めだす。


「う…や…っ」


「可愛いね。カカシの此処」


 耳まで真っ赤になってカカシは息を詰める。


 ふと、ミナトの体温が消えたと思ったら下肢に熱い何かが触れた。


「ひゃ…っ」


 ちゅぷりと静かな部屋に、濡れた音が轟いた。


「はあっ、先…せっ」


 じゅぷじゅぷと止め処なく響く水音と共に、カカシは大きく仰け反って下肢で揺れている金色の髪を握り締める。


 ミナトは目を開けたまま、頭上で悶えているカカシをじっと見ていた。


 口を大きく開きながらも、声は出すまいと必死に酸素を取り込んでいる。


 筋肉など殆どない未成熟な身体はまだ少年の骨っぽさを残し、それでも欲望を求めて戸惑い蠢いている。


「んっ、やぁ…っ」


 根本から丹念に大きな手で扱かれ、先端を堅く尖らせた舌で愛撫される。


 初めての感覚にカカシは腰をくねらせて足先で何度もシーツを引っ掻いた。


「あぁ…ああ…先生…っ」


 袋を揉まれて肉棒を熱い口腔で包まれる。


 一気に射精感が高まり、カカシは慌ててミナトの金色の髪を引っ張った。


「や、やだ…先生っ! 出るっ、出ちゃうよぉ…っ!」


「出していいよ。飲んであげる」


 信じられない科白に顔を紅潮させたと同時、欲望が勢いよくミナトの口腔目掛けて吐き出された。


「ひ、あ……」


 びくびくと腰を震えさせるカカシを見つめながら、最後の一滴までミナトが口を使って放出させる。


 出し切った疲労感に、半身を起こしていたカカシはくたりとベッドに倒れた。


「せん…せ……」


 息を整えながらミナトを呼ぶと、口を拭いながらミナトがカカシの上に乗り上げるようにして目を合わせてきた。


「気持ちよかったかい?」


 とろんとした目でカカシは素直に頷いた。


「これで終わりじゃないですよね…?」


 どうしようかと迷うように、ミナトは苦笑を浮かべる。


「俺…先生と繋がりたい…」


「…よく知ってるね、カカシ」


「よく分かんないけど…後ろ使うんでしょ…?」


 まだ夢の中にいるようなカカシの顔を撫で、ミナトは優しく微笑んだ。


「カカシは幾つになった…?」


 突然の質問に一瞬きょとんとしたものの、カカシは素直に「15」と言った。


「15か。もうそんなになるんだね」


「……」


「俺の知らない間に色んなことを学んでいた訳だ」


 ミナトの耳障りの良い落ち着いた声を、カカシは半ば夢心地で聞くともなしに聞いている。


「でも此処は…」

再び下肢に伸びたミナトの手が、薄っすらとしか生え揃っていない淡い茂みを撫でた。


「ぅわ…っ」


 突然の感触にカカシが飛び上がる。


「まだ子供の体だね。大人になりきれていない」


「お、俺はもうガキじゃありませんっ」


 咄嗟にカカシは反発の声を上げた。


「…そうだね。出したばかりなのにまた硬くなってる」


 きゅっと握られて、再びカカシは口を閉ざした。


 するりとミナトの手が腰を回り、浮かされるように持ち上げられる。


 そして先走りに濡れたカカシの体液を指に塗りつけ、カカシの後孔にぴたりと這わせた。


「ひゃ…」


「優しくするからね」


 ミナトは決して嘘を吐かない。


 やわらかな風のように囁く声は、いつも穏やかで安心する。


「先生…」


 覚悟を決めてぎゅっとミナトの服を握り締めた。


「カカシ……」


「――ッ!」


 つぷりと指が一本差し込まれる。


「あ、い…っ」


 苦しい。


 予想以上の圧迫感に、カカシは恐怖と不安に苛まれた。


「大丈夫。息を吐いて」


 優しい奏でるような囁きは、カカシがずっと追い求めていたミナトの声だ。


「せん…せ…」


「カカシ…好きだよ」


「…っ」


 ぎゅっと目を閉じて、ミナトに縋りつく。


 暫くすると、内壁を弄っていた指の動きが大胆になり、くちゅくちゅと厭らしい水音が下肢を支配し始めた。


「ひ、っ」


 次第に慣れてきたところで、もう一つ指を追加される。


 びくりと一瞬強張った顔は、直ぐ傍に近付いたミナトの匂いで安心感を得られた。


「ぁ…ん、は……」


 相変わらず異物感はあるものの、濡れた滑りを借りてなんとかスムーズに指を行き来できるまでになる。


「そろそろ、いいかな」


 声に瞼を上げれば、優しい微笑を浮かべたミナトと目が合った。

月明かりに晒された金色の髪がキラキラと輝いていて、青い眼がまっすぐ自分を映し出している。


 いつもと違うのは、その目にはっきりと欲情の色を湛えていることだ。


「ちょっと待っててね」


 そう言うとミナトは全く乱れていなかった自らの服を次々と脱ぎ捨てて行った。


「あ……」


 カカシは思わず声を上げた。


 曝け出された、大人の男を見せ付ける膨張した塊。


 ミナトとは何度か風呂も一緒に入ったことがあるしそれを見るのは初めてでもないはずなのに、今はグロテスクに形を変え、膨張し屹立した男の欲望に今更竦み上がる。


「…気持ち悪いかい?」


 カカシは咄嗟に首をぶんぶんと振った。


 カカシとて男だ。興奮した男がこんな状態になるのは知っている。


「俺はお前が思ってるような綺麗な人間じゃないんだよ。黄色い閃光なんて呼ばれたって、本当は好きな子の身を案じてばかりの臆病な男なんだ。失望しただろう?」


「失望なんて…」


 ミナトはふっと笑うと、カカシに乗り上がり優しく口付けた。


「カカシは優しいね」


「そ、そんな先生の方がずっと…っ」


「お前は優しいよ。だって、俺の願いを叶えてくれるんだろう?」


「ねが…い?」


「カカシが欲しい」


 かっと顔を真っ赤に染めて、カカシは目を潤ませた。


「くれるかい? カカシの全てを…」


「は、い…」


 蕩けるような顔で答えると、また優しくキスをされ眼を閉じた。


 ゆっくり足を開かされる。

ミナトの体が間に入り込み、欲望を押し付けられると反射的にカカシの体が震えた。


「力を抜いて…」


 風のように囁かれる大好きなミナトの声。


 カカシは言われるまま息を吐き、ミナトの挿入を待った。


「あ…っ」


 ゆっくりと貫かれ、条件反射で体が逃げを打つ。


 しかしミナトに腰を掴まれて挿入は益々深くなっていく。


「い、痛い…っ、先生…っ」


「うん。もう少し我慢して」


 ミナトの声も上擦っている。


 カカシの痛みを少しでも和らげようと、細い銀髪を何度も撫でて顔中に口付てきた。


「う…せん、せ…っ」


「大丈夫。俺を信じて」


 一番太い部分を越えると、後はずぶずぶと入った。


「ひっ…うぅ……」


 ついにカカシの目から留まりきっていた涙が零れ落ちた。


「全部入ったよ」


 ミナトの声に、カカシが薄っすらと目を見開いた。


 その時見たミナトの顔は、額から汗を滲ませて少し息を乱していた。


「先生と…繋がったんですか…?」


 そうだよ、とミナトは溢れんばかりの笑顔で頷いた。


「嬉しい…」


「俺も嬉しいよ」


 再び口付け、舌を絡ませ合って激しく貪る。


 二人の体の間で萎えていたカカシのモノをゆるゆると扱かれると、カカシが慌てたように口を離した。


「せ、先生…っや」


「カカシにも気持ち良くなってほしいから」


 何度も擦られると、カカシの幼い陰茎が膨張し先走りの蜜を纏い始める。


「あっ、ふ…あぁ……」


 やがてミナトが埋まり切っていたモノを浅く引き抜き、また貫いた。


「ひっ…う、…」


 動くたび、カカシの目から何度も涙が伝い落ちた。


 それでも耐えるようにミナトに縋りついてくる手が愛しい。


「カカシ…」


「せんせ…ミナト…先生…っ」


 打ち付ける動きが次第にリズムを持って刻み始める。


「ぅあ…っ、あ、あ…」


 頭が朦朧としてくる。


 前を擦られながら、ミナトの欲望が自分の中で暴れている感覚に酔いしれた。


「カカシ、何処がいい?」


 耳元で珍しく荒いミナトの息遣いを聞き、問われてもカカシには意味が分からなかった。


 痛みとかどうでもいい。ミナトと繋がっている。

それだけで涙が出るほどの幸福感でいっぱいだった。しかし、


「ああっ!」


 突然カカシが大きな声を上げた。


 ミナトは目を細めて笑うと、其処を中心に攻め立てた。


「せ、先生! やっ、そこ…っ」


「此処がいいんだね」


 ある一箇所を擦り上げられた途端、カカシは大きく仰け反った。


「やぁ…っ! だ、だめ…っ! あっ、ああ!」


 カカシは呆気なく二度目の精液を吐き出した。


 それにも構わず、ミナトは動きを止めようとはしない。


「ひぃ…! せ、先生、だめぇ…っ」


 カカシの顔は涙や涎でぼろぼろだった。


 しかしミナトは更にカカシの足を持ち上げ、激しく抽挿を繰り返す。


「はぁっ、はぁっ、うぅ…んっ」


 もはやカカシは惚けた人間のように喘ぎまくった。


 もう触れられてもいないソコは再び堅く張り詰め、若い性は初めて知る官能感覚を貪欲に追い求める。


「あっ、あっ、ああ……ん」


「カカシ…可愛いよ…」


 細い体を抱き締め、ミナトは深いところでぐるりと円を描いた。


 ミナトの形をまざまざと見せ付けられたようで、カカシはさらに甘い声を上げて善がり狂う。


「先生…ミナト先生…好き……」


「ああ、俺もだよ」


 互いに微笑み合い、もう何度目かの口付けをする。


 また律動を開始すると、カカシは堪らないというような顔をして嬌声を上げた。


「あぁ…ん…先生…はあ…はあ…」


 慣れてきた体は、更なる快感を欲してカカシを翻弄する。


 そんなカカシの嬌態を見て興奮しないわけもなく、ミナトは掻き抱くようにカカシを求めた。


「んっ、あ、はあっ、ん……っ」


「カカシ…」


 互いの限界が近付き、律動は更に激しさを増す。


 カカシの後孔が伸縮を始め、まるで求められているような錯覚をもたらしミナトを翻弄した。


「一緒に達こうか…カカシ…」


「は、はい…ぁっ、あ……ああっ!」


 その直後、カカシはミナトの腹に熱い飛沫を撒き散らした

 
同時、ミナトは顔を顰めてカカシの熱い体内に放出する。


 ぎゅっと後孔が強く伸縮し、ミナトは顔を顰め欲望を無理矢理カカシの中から抜き取った。


 蕾からどろりと出てきた白濁は、カカシのモノと混じり合い誰が誰のか分からないほど滴り落ちてきた。


「せん…せ…」


 顔中涙と汗まみれのカカシを愛しそうに手で覆い、小さくキスをする。


「大丈夫かい…?」


 こくんと頷いてカカシは惚けたようにミナトを見つめた。


「ありがとう。カカシ」


「え…?」


「生きると約束してくれて」


 カカシはやっと夢から醒めたように、飛ぶように起き上がった。


「痛…っ!」

 しかし下肢の激痛に思わずに顔を歪め、起こしかけていた体は再度ベッドに沈む羽目になった。


「ほら、無理しないで」


 今更恥ずかしさが戻ってきて、カカシは顔を上げられなくなり突っ伏したまま動かなくなった。


 そんなカカシの意図を汲み取ったのか、ミナトは何も言わずカカシの髪をそっと撫でた。


「…ありがとう」

 時間を置き、また同じことを言われる。


 カカシはゆっくりと顔を上げて、頭上で優しく微笑む師匠を見つめた。


 体を気遣うように静かに起き上がると、ミナトから視線を外しぺこりと頭を下げる。


「俺こそ…ありがとうございました」


「なにが」


「俺の我侭、聞いてくれて」


「……」


「これで最後にします。俺ももう、ミナト先生から卒業します」


 ミナトは少し淋しそうに目を伏せた。


「今までお世話になりました」


 深く頭を垂れた愛弟子に、ミナトが顔を上げてくれと言わんばかりにそっと肩に手をかけた。


「君ならどこへ行っても大丈夫だよ」


 じわりと浮かんだ涙を誤魔化すようにカカシが無理矢理笑顔を浮かべる。


「先せ…いえ、もう四代目火影様、ですね」


 ミナトは「やめてくれよ」と擽ったそうにはにかんだ。


「元々俺は火影なんて柄じゃないんだよ。それは俺の本性を知った君なら分かるだろう?」


 カカシは少しだけ照れながらも、いいえとはっきり言った。


「先生は火影になるべき人です。里の人選は間違っていなかったと思います」


「でも三代目もご健在なのに、俺みたいな若造がね…」


 そうですね、とその時初めてカカシが同意したので、「コラ」と言ってミナトが口を尖らせた。


 はははと二人で暫く笑い合い、その後顔を見合わせて互いの目を見つめる。


「…火影になって、一つだけ良かったことも出来たかな」


 なに?と首を傾げるカカシを、ミナトが包み込むように抱き締めた。


「君に夜伽の任務は与えないよ」


「…っ!」


 ミナトの胸の中で、カカシは顔を真っ赤にして目を見開く。


 そのカカシを宥めるように、ミナトはカカシの銀髪に顔を埋めた。


「お前にそんなことはさせない。贔屓だと言われたって構わないよ」


 突然、腕の中の少年がくすくすと笑い出した。


「なに?」


「先生はやっぱり先生ですね。俺に甘すぎます」


「ああ、こればかりはどうしようもないよ」


 ミナトは別段否定することもなく写輪眼を持つ瞼に唇を押し付けた。


「カカシは特別だから」


「…結婚するんでしょう」


 ミナトの顔から初めて笑顔が消える。


「…知ってたの」


 ええ、と言ってカカシは小さく笑った。


「情報が正しければ、子供も出来たとか」


「まいったな…」


 言い訳も出来ないと、ミナトが苦笑を浮かべる。


「最後、と言ったのはその意味もあったんですよね」


「君に嘘は吐けないな…」


「…おめでとうございます」


 ミナトは笑顔を引っ込めると、カカシの細い肩を引き離して目を合わせた。


「カカシ。もし君が良ければ、だけどね」


 きょとんとしたカカシがミナトを見上げる。


「子供が生まれたら、君がその子の師匠になってくれないか?」


「え…」


 予想だにしなかった言葉ににカカシは驚いた。


 若くしてこれだけの戦闘力を誇るミナトだからこそ火影にまで任命されたのに、何故わざわざ自分へ大事な我が子を託そうとするのだろう。


「で、でも俺が教えなくたって先生から直々に伝授した方がきっとお子さんも…」


「俺は火影になる。その子だけじゃなく里全体を守らなければならない。もしかすると万が一ってこともあるだろう」


「そ、そんな! 先生が死ぬなんて…!」


 カカシは思わずミナトにしがみ付いた。


「火影になるという事は里の盾になるという事だ。だから力のある者が選ばれる。自らを犠牲にしてでも里を守り抜く。先代火影様たちもみなそうだった」


「……」


「カカシ。これからお前に面白い物を見せよう。よく見てて」


 突然ミナトは片手でチャクラを練り始め、掌上で小さな球体を作り出した。


 驚いて目を瞠るカカシに、柔らかに微笑んだミナトが眩しいそれを静かにカカシの前に翳して見せる。


「螺旋丸と言うんだ」


「らせん…がん」


「三年かけてあみ出した術だけど、未だに粗があり未完成だ。他の性質変化を加えて始めて完成と言えるだろう」


「……」


「これを今君にコピーしてもらいたい。そしてこれから生まれる俺の子に教えて欲しいんだ」


 カカシは両目を見開いてミナトを見つめた。


 カカシの写輪眼をそっと撫でて、ミナトが「頼む」と一つ頷く。


 その意思を汲み取って、カカシはミナトの螺旋丸を見つめると真っ直ぐ目を見開きそれを写輪眼に焼き付けた。


「ぅ…っ」


 がくりと倒れかけたカカシをミナトが直ぐに支える。


「大丈夫かい?」


「はい…」


 未だに写輪眼を使うと大きく体力を消耗する。


「ただでさえ疲れているところを、悪かったね」


 先程までの性交を思い出して、カカシはミナトの胸の中で顔を真っ赤にした。


 宥めるように、ミナトが優しい仕草でカカシの髪を撫でる。


「せ…四代目」


「先生でいいよ」


「幸せになって下さい。その子と…共に…」


「…ああ」


「死なないで下さい」


「君もね…」


 それからカカシは喋らなくなった。


 そっと覗き込めば、小さな寝息を立てて眠っているカカシがいる。


「おやすみカカシ…愛しているよ」


 ミナトは銀色の髪に小さく口付けを落とすと、腕の中で眠る少年を最後にぎゅっと抱き締めた。

 








――十七年後。

 

「カカシせんせー!!」


 遠くから聞こえた大声に、転寝していたカカシは顔の上に乗っけていたイチャパラを退け片目を見開いた。


「これこれっ! 見てくれってばよ!」


 キラキラした目をしてカカシの前にやって来た金髪の少年に、カカシは「なに〜?」と欠伸を噛み殺しながら体を起こす。


 少年はにやりと笑うと、カカシの前に片手を差し出した。


「うぐぐぐ……はぁっ!!」


 突然叫んだと思ったら、掌上に渦巻く球体が浮かび上がった。


「ほらなっ! 影分身無しで螺旋丸出せるようになったってばよ! これで俺もカカシ先生と同じだ!」


 少し驚いたように見ているカカシの前で、金髪の少年はそれを得意気に掲げて見せる。


「あー…それはいいけど、取り入れるべき風の性質変化はどうしたんだナルト」


 そ、それはと少年は一気に口篭る。


「結局また影分身使わなきゃいけないってことでしょーが」


「そ、そっちはまた修行して使えるようにするってばよ! ともかく今は一歩前進ってことで…っ」


 その後口を尖らせてしまったナルトに、カカシはクスクス笑うと、ぽんぽんと柔らかい金髪の頭を撫でた。


「そうだな。一歩前進だな。よく頑張りました」


 ぱあっと少年の顔が瞬く間に輝きを取り戻す。


「へへへ。俺がカカシ先生を追い越すのも時間の問題だってばよ!」


 そうだなと笑い、元気に駆けて行った金髪の少年の背中を見送った。


 その背に、四代目火影の凛々しい姿が重なる。


――先生…あなたの息子はあなたによく似てますよ。


 真っ直ぐで、眩しくて、強く優しい。

 カカシは澄んだ青空を見上げると、何処までも高く世界中を照らす眩しい太陽を見て微笑んだ。

                               【完】





あとがき

少年時代のカカシ先生がエロすぎてミナトさんが男前すぎて勢いだけで書いてしまったんですが、なんというか…読み返すのも恥ずかしいほどにただのイチャイチャパラダイスになってしまいました…(どよーん…)それでも少しでも楽しんで頂けたのなら嬉しいです。次はちゃんと大人カカシ受けを書きたいなあ…(妄想)



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――先生…あなたの息子はあなたによく似てますよ。


 真っ直ぐで、眩しくて、強く優しい。

 カカシは澄んだ青空を見上げると、何処までも高く世界中を照らす眩しい太陽を見て微笑んだ。

                               【完】





あとがき

少年時代のカカシ先生がエロすぎてミナトさんが男前すぎて勢いだけで書いてしまったんですが、なんというか…読み返すのも恥ずかしいほどにただのイチャイチャパラダイスになってしまいました…(どよーん…)それでも少しでも楽しんで頂けたのなら嬉しいです。次はちゃんと大人カカシ受けを書きたいなあ…(妄想)